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Becoming Redwood レッドウッドらしく生きること

カナダ映画 (2012)

ライアン・グランサム(Ryan Grantham)がトラウマを抱える少年レッドウッドを演じる映画。時代は1970年代初め、ヒッピーの両親は、ベトナム徴兵を逃れようとカナダに移住する父と、それに反対する母とがカナダ国境で離別、幼いレッドウッドは父によって育てられる。両親が別れる時、たまたまカーラジオから流れていたジャック・ニクラスが頭に染み込み、いつも、1975年のマスターズでニクラスと対戦している幻想にひたっている。そして、ニクラスを負かし、グリーン・ジャケットを獲得すれば3人で一緒に暮らせると夢見ている。かなりユニークなストーリーで、ゴルフの知識も必要とされるが、ライアンの演技が実に自然で、映画を、最後の落としどころまで見事に導いている。

映画は、カナダ国境まで来て、入国を拒否し、1人アメリカへと戻っていく母から始まる。そして、時代は一気に1978年に飛び、手入れの行き届いていない芝庭でレッドウッドがゴルフの真似事をしている。1975年のマスターズで、ジャック・ニクラスと第13ホールで対戦しているつもりなのだ。毎回、13~15ホールと決まっている。そうした息子に理解を示す父だったが、麻薬売買への関与で逮捕され、レッドウッドはアメリカで暮らす母の元に送られることになる。しかし、アメリカでは、母は本来の夫の元に帰り、レッドウッドより早く生まれた兄弟が2人もいる〔母が、ヒッピーの父に偶然出会い、うっかり出来ちゃったのがレッドウッド。だから、母は、カナダに行かず、夫と2人の息子のいるアメリカに戻った〕。父は、息子を「男にする」ことしか考えないマッチョで専制的な人物。妻の不倫の子で、なおかつ、長髪で菜食主義と不倫相手にそっくりなレッドウッドには、辛くあたる。そんな彼の救い主となるのが、祖父。父が15の時、弟を鹿と間違えて撃ち殺してしまった事件に責任を感じ、以来心を閉ざし、地下室に閉じ籠もっている。その老人が、レッドウッドと出会い、お互いに助け合うことで、お互い人生を取り戻していく。

ライアン・グランサムは、本来、黒いブラウン系の髪だが、ヒッピー風の金髪(かつら)で登場。眉毛だけ本来のカラーなので、少しきつい顔つきに見える。1998年の生まれだが、出演時は役柄と同じ11才だ。公開までに時間がかかったのであろう。幻想と現実とが交叉するなかなか難しい役どころで、台詞も多いが、堂々とこなしている。


あらすじ

長髪の如何にもヒッピーという風貌の男女がカナダ国境まで車でやって来る。しかし、それまで、車内でも「行かない」と言っていた妻〔実は、ただ不倫して一緒に行動しているだけで、正式な夫と2人の息子がアメリカにいる〕が、ついに別れる決心をする。後部座席にいた幼いレッドウッドに「愛してるわ」と声をかけると、「ここで、分かれるわ」ときっぱり言い、荷物一つで歩いて引き返して行く。ベトナム戦争への徴兵忌避でカナダでの出国がどうしても必要な夫は、引き返すつもりはない。そこに、レッドウッドの独白が重なる。「母がいつ去ったかは覚えていないが〔車の外での口論だったので当然だろう〕、僕が、いつジャックとルーベンに紹介されたかは、よく覚えている〔カーラジオで聴いていた〕」。ジャックとは、かつてゴルフの帝王と呼ばれたジャック・ニクラス、ルーベンは1967年までニクラスのキャディーを務めたトリニダード出身のルーベン・マローン〔実在の人物かどうかは不明〕のことだ。独白はさらに続く。「ジャック・ニクラスは、ルーベンがいなくても最高のゴルファーだ。そして、僕がジャックを倒した時、すべてが元通りになる」。
  
  

そして、1978年。11歳になったレッドウッドが裏庭の芝の上でゴルフをしている。画面には、最初に、「16番ホール、レッドウッド 7アンダー、ジャック 7アンダー」と表示される。このような表示は、映画の中で何度もくり返される。レッドウッドの空想上の1975年のマスターズが始まる合図になっている。空想が始まると、レッドウッドは独り言を呟く。ラジオ中継の真似だ。「レッドウッド・フォレスト・ハンセンは、オーガスタ・ナショナルの曲者の16番ホールで、175ヤードを飛ばしました。ニクラスは、ピンの40フィートに無難にオンしています。ここで、アプローチショットが良ければ、彼にもチャンスがあります。残る3ホールでジャック・ニクラスを破り、マスターズで初めてのグリーン・ジャケットを獲得するかもしれません…」(1枚目の写真)。レッドウッドの頭の中では、後ろにキャディーのルーベンがいて、時々助言してくれるのだ(2枚目の写真)。その時、父から何度も声がかかる。「パパ、今16番で、厳しいトコ。ジャックは まだ打ってない」。「ジャックは明日まで待てるが、お前は夕食に30分遅れてるぞ」。
  
  

父の家に、久しぶりにやってきたジョノ伯父。伯父が、「戦争は、始めるべきじゃなかった。だが、もう終わった。カーターは、帰国を許している」と言う〔1977年の大統領恩赦令により、徴兵忌避で訴追されることなく帰国が可能となった〕。父は、「興味ないな。ここで うまくやってる」。それを聞いたレッドウッドが、「パパ、戦争が終わったら、オレゴンに行ける、そしたら、ママに会えるって言ったよね」と質問する(1枚目の写真)。「なあ、話はそんな単純じゃないんだ」。「だけど、言ったよ、オレゴンに行けるって…」。強制的に話を打ち切る父。不満そうなレッドウッド。その後、レッドウッドは部屋に行かされ、2人は密談を始める。階段で隠れて耳を澄ますレッドウッド(2枚目の写真)。父が、伯父にコカインを勧める。伯父は、「もっと 用立てできるか? つまり、情報が欲しくてね…」。この時、レッドウッドがアイアンを落としてしまい、早々に追っ払われる。実はこの伯父、今は警察に協力していて、おとり捜査の一環での質問だったのだ。
  
  

翌日は、夏休み前の最後の登校日。帰宅途中、灰色のバンに尾行されていると気付いたレッドウッドが、玄関で父に警告する(1枚目の写真)。証拠を隠滅しようと焦る父の前で、「周囲は封鎖済みだ」と言って警察の徽章をテーブルに置く伯父。父は即刻逮捕され、息子と話すことも許されない。そして、場面は一転、長距離バスの乗り場に。レッドウッドの隣に座った女性が、「バスは10分で発車するわ。あなたのお母さんに連絡したから、レディングの近くで会える。長い旅になるけど、もうここにはいられないの。辛いことは分かるけど、これくらいしかしてあげられない」(2枚目の写真)。
  
  

バスから降り、迎えに来た母と道を対峙して向かい合う2人(1枚目の写真)。母は、長年バラバラだったことには言及せず、ただ、部屋が狭いこと、15と13の兄が2人いることを話す。窓の方を向いたままのレッドウッドだったが、荷物のアイアンを見てゴルフの話になると、急ににこやかになる。そして、母の家に到着。母が夫に、「レッドウッドよ」。母がレッドウッドに、「あれがアーノルド」。レッドウッドが義父に、「今日は」(2枚目の写真)。義父:「やあ」。母:「あれがジョシュとトッド」。「どうも」。手を上げたのはトッドだけ。ジョシュは、ムスッとしたままで、「何て髪だ」と言っただけ。3人に歓迎の様子はかけらもない。妻や母が不倫して産んだ子供なので、仕方ないのかもしれない。
  
  

レッドウッドは、母に、寝室まで案内される。天井裏の部屋。しかも、既に兄弟2人がいる狭い場所の窓際に、小さなベッドが置いてあるだけだ。「詰め込まれたって思わないでね」「今は、アーノルドが工場で働いていないから、あなたの部屋を用意する時間くらいあったんだけど」。つまり、失業中の義父には、親切心など皆無だったのだ。家計は、母がスーパーでパートをして支えている。即席ベッドに座り込むレッドウッド(1枚目の写真)。それを見た母が、気分転換にと、「夕食の手伝いしてくれない?」と言い出す。「ショートリブがあるの」。「いらない。肉は食べないよ」。「まあ」。「食べるのは豆腐。大豆で出来てて、お肉の代りになる。高蛋白だし」。「お店に行って、豆腐を買ってくるわね。最初は辛いけど、だんだん慣れる。約束するわ」。レッドウッドが母に、「ジェイド?」と名で呼びかける。「豆腐は 少し焼いてね」。そして、夕食の時間。母が、焼き豆腐を出したことから、ひと悶着が起きる(2枚目の写真)。豆腐なるものに興味を示したトッドを父が叱り、そのトッドを兄がバカにしたことで兄弟の言い争いになる。父は、「お前らのせいで、頭が痛くなった」と言い、母に、「特別扱いすると、どうなったか見たろ。こいつも、俺達と同じものを食べるんだ」「いいか、この家では、誰にもただ乗りはさせん。ここに住む以上、この家のルールに従ってもらう」「トッドの代りに薪割りをやり、洗濯を手伝え。髪の毛も切るんだ」。寝室でも言い争う夫婦。「お前は、ヒッピー流は家に持ち込まんと約束した」。「私が約束したのは、イーサンとは終わったから。息子に二度と会わないとは約束してない。今、ここにいるのよ。少しは、時間をやってちょうだい」。「俺には どのくらい時間をくれた? トッドやジョシュには? レッドには 特別扱いか? それで どうなると思う?」。「私のせいじゃない。仕方ないでしょ」。「『仕方ない』か。何度も 聞かされてきた言葉だな」。
  
  

朝、母の手伝いを申し出たレッドウッドを、母は、地下室に連れて行く。義父アール〔レッドウッドにとっては義祖父〕に朝食を届けるためだ。母がドアを開けると、黒メガネの老人が、「このチビは誰だ?」と訊く。「私の息子の、レッドウッドよ」。「男の子か。この髪なら、女の子だと思ったぞ。いつから、ヒッピーがうろついとる?」。そして、食事を受け取って地下室に消える。母は、レッドウッドに、秘密だと念を押してから、アールが、「アーノルドのお父さん」で、みんなは気違いと思い、医者は妄想性と診断しているが、実は「ハエ一匹殺せない人」だと教える。昔、夫アーノルドが15歳の時、弟のダニーと義父アールの3人で猟に出かけた時、アーノルドがダニーを鹿と間違えて撃ち殺してしまう。2人の父だったアールは、自分自身を責め、気違いのようになって自分から地下室に閉じ籠ってしまった。以来、一度も部屋を出たことがないと話す(1枚目の写真)。その後、画面には、「17番ホール、レッドウッド 8アンダー、ジャック 8アンダー」と表示され、レッドウッドが草地を見つけてマスターズの幻想に入る。佳境に入った頃、壁を叩く音がし、声が聞こえてくる。「ひどいスイングだな、坊主」。「何て?」(2枚目の写真)。「聞こえただろ? ボケっとイタチみたいに立っとらんで、こっちに来い」。「何なの?」。地上すれすれの窓に貼られたアルミ箔から手が出てきて、右の方を指差す。そして、1メートルほど離れた小さな穴から紙が押し出された。「ほら、取れ」。「何なの?」。「とっとと取れ」。紙には、「お前には手段が、わしには秘訣がある。のるかのらんか、お前次第だ」。この後どうなるか知っているから、正しく訳しているが、「You got access. I got the secret. Deal or no deal, that is the question.」だけでは、レッドウッドには、ちんぷんかんぷんだったろう。つまり、「お前は、どこにでも行ける。わしはスイングの秘訣を知っている。交換条件にのると決めたら、地下室に来い」というのが老人の言いたかったことなのだ
  
  

翌早朝。レッドウッドは一人で起き出し、自転車に乗る。そして森を抜けると、期せずして視界が急に開け、ゴルフ場のようなグリーンが前方に伸びていた(1枚目の写真)。そして、いつもの17番ホールが始まる。しかし、裏庭と違い全力で打ったら、錆びたアイアンが折れてしまった。体を震わせながら見つめるレッドウッド(2枚目の写真)。部屋に戻ると、ちょうど義父が息子達を叩き起こしに来たところ。2人がまだ寝ているのに、レッドウッドは服まで着ていたので褒められる。ゴルフをしていたと悟られないよう、背中を向けたまま黙っているレッドウッド(3枚目の写真)。兄たちが降りて行った後、梱包用の粘着テープを拝借し、朝食が終わってからアイアンを修理し始める。
  
  
  

アーノルドは、息子2人とレッドウッドを猟に連れて行く。レッドウッドには、「これを着ろ」と厚手のジャケットを着せるが、その時、ドジなトッドが、「銃身を下げてろ」と言われ、下げる時に引き金にさわってしまい、トラックのヘッドランプに命中。後ろを向かされ、尻を蹴飛ばされる。倒れたまま泣き出すトッド。頼りない感じの少年だ。トッドに自分の指を引っ張らせる父。この一家では、これが和解の合図なのだ。義父はレッドウッドにも銃を渡す。「これは本物だ。初心者用のピストルじゃない。お前を男にしてやる。男はコルトを使う。これは、コルト・シャープス・デラックスだ。単発ライフル銃、30インチ施条銃身…」。そして、「サミュエル・コルト(1814-62)を知ってるか?」と訊く。レッドウッドが知らないと答えると、「エイブ・リンカーンは、すべての男を自由にしたかもしれんが、サム・コルトはすべての男を平等にした」と教える。アメリカの銃社会がなぜ変わらないかを象徴するような言葉だ(1枚目の写真)。そして、アーノルドとジョシュ、トッドとレッドウッドに別れて狩本番。トッド:「どうしよう?」。レッドウッド:「知らない」。歩いているとポキッという音が聞こえる。「きっと鹿だ」。確かに木の間から鹿の頭が見える。「ホントに、撃ってもいいの?」とレッドウッド。「前は、ジョシュが撃った。今度は、俺の番だ」。「だけど、もし…」。実は、レッドウッドには鹿の奥の方に人影が見えたのだ。それに気付かず撃とうするトッド(2枚目の写真)。結局、レッドウッドが「トッド」としつこく話しかけたお陰で、ジョシュの方が先に鹿を仕留めて事なきを得た。しかし、遅ればせながらトッドが撃った反動で、すぐ後ろにいたレッドウッドの目に肘が当り、目の周りに黒アザが。
  
  

レッドウッドが帰宅すると、母から、「今日、お父さんから私宛に手紙が届いた」と告げられる。父が、カナダからカリフォルニアへ移送されると書いてあったといい、手紙を渡される。地下室の入口近くで隠れて手紙を読むレッドウッド。そこには、母への詫びと、レッドウッドを引き取ったことへのお礼、そして、カリフォルニアで麻薬所持により裁判を受けることになったと書かれていた。そこに、突然 義祖父のアールが現れ、「紙は読んだか?」と訊く。「意味不明だよ」。それを聞いて、「入れ、話し合おう」。恐る恐る中に入るレッドウッド。中は思ったより快適で、ケーブルTVまである。「好きな番組は?」と訊かれ、すぐさま「バーディ」と答える。有名なゴルフ番組だ。アールもよく知っていて、話が合う。「1975年のオーガスタ見た?」。「もちろん」。立ち上がって、ショットの内容を身振りで示すレッドウッド(1枚目の写真)。いつも幻想の中でプレーしているから、お手のものだ。興味深く聞き入るアール。レッドウッドの話は、いつしか、グリーン・ジャケットから、さっき読んだ父の「移送」にまで及ぶ。レッドウッドの考えを理解したアール。「ジャックをやっつけて、魔法のジャケットが欲しいんだな?」と訊く。「そう」。「じゃあ、わしを助けてくれ。秘訣が教えてやる。お前は、どこにでも行ける。わしは、ましな食い物が欲しい。残飯はうんざりだ。ブロッコリーを食うと、屁が出る。コーヒーがいい。クリームと砂糖2個。それに、チョコレートだ」。「チョコレート?」。「チョコだ。あのお姫様に 長いこと会っとらん。ナチの階段で、別れ別れだ」「どうだ?」。「やるよ」。「チョコを持ってきたら、始めよう」。そして握手を交わす2人(2枚目の写真)。
  
  

夜間のゴルフ幻想が終わってから、ジョシュのベッドサイドからチョコレートを拝借し、コーヒーなど諸々を持って地下室へ。コーヒーは、冷めて、砂糖不足だったが、チョコレートがあるのでアールは大満足。チョコの匂いをかいで至福の面持ちだ(1枚目の写真)。レッドウッドの持ってきた悲惨な状態のアイアンを見たアールは、「これじゃダメだ」と言い、ベッドの下からゴルフバックを出す。7番アイアンをレッドウッドに渡し、ベッドのマットレスを壁に立てかけ、そこに向かって打たせる。そして、「秘訣を教えてやる。バックスイングしろ。そこで とめるんだ」。そして、レッドウッドの左足の向きを変える(2枚目の写真)。「これだけ?」。「そうだ。ホーガン、ジョーンズ、ニクラス、みんなこうしてる」。そして、「さあ、やってみろ。凄腕を見せるんだ」。きれいに打ったところで、「そこで とめろ!」とフィニッシュ・ポジションで動きをとめさせる。感激するレッドウッド。これまでの我流とは全く違う。アール:「きっと、18番で役に立つぞ」。「ありがとう」。
  
  

食事の時、アールを介護施設に入れようと提案する母。きっぱりと拒絶するアーノルド。その後で、母は、レッドウッドに、「今日、イーサンの弁護士から電話があったの。会いに行けるみたいよ」と話しかける。しかし、アーノルドは、「こいつは行かせん。お前も行くな。これ以上、議論する気はない」と高圧的だ〔不倫相手なのだから、当然の反応かも〕。それに対し、「僕が望めば、パパに会える」ときっぱり言い放つレッドウッド〔レッドウッドには何の責任もないし、実父に会いたいと思うのは当然だろう〕。「何だと? もう一度 言ってみろ」。この不気味な命令に、臆することなく、「僕が望めば、パパに会える」と毅然と言い返す(1枚目の写真)。殴ろうとする父を止める母〔代りに殴られた〕。シーンは切り替わり、車で刑務所に向かう母子。車内で、義父と実父の関係を初めて知らされるレッドウッド。刑務所では、ガラス越しの対面で、電話を使って話す。母の次に電話をとったレッドウッド。一方的に、アールに教わった秘伝の話しをする。そして、グリーン・ジャケットが手に入れば事態は好転するとも(2枚目の写真)。
  
  

刑務所から帰ってきた母子。家から出てきたアーノルドが、母に、「はっきりさせておく。こんなことは許さんぞ」と威嚇する。一方、レッドウッドは、近くで空き缶を撃っていたジョシュに近づいて行くと、「持ってて」とアイアンを渡し、うっかり手に取った兄から、銃を奪うと、アーノルドと母の方に真っ直ぐ歩いて行く。そして、ライフルの銃口をアーノルドに向け、「僕の母さんに 二度と手を出すな」と強い調子で言う。アーノルド:「銃を向けるな」(1枚目の写真)。レッドウッド:「約束しろ」。黙っているので、レッドウッドはもう一度「約束しろ」と言い、「その くそ銃を…」と言いかけたアーノルドの足元に発砲。「こいつ」と銃の奪い合いになる。しかし、レッドウッドは一歩も引かず、「二度と母さんを殴るな! 約束しろ!」と怒鳴る。アーノルド:「分かった」。レッドウッド:「はっきり!」。「聞くんだ。約束する。お前の母さんを二度と殴らない。誓って」「これでいいか?」。「あともう一つ。レッドウッドと呼んで。お願い」(2枚目の写真)。結構 男らしいレッドウッドを気に入ったのか、笑って「OK」というアーノルド。その後で、かたく抱き合う母子。
  
  

その夜、レッドウッドは、地下室で、アールと再びゴルフ(1枚目の写真)。フォームが安定してきている。「18番でジャックをやっつけたら、パパは監獄から出られる。そして、僕とママを迎えにくる。その時、一緒に 来てもらえる?」と訊く。アール:「人生は、そんなに簡単じゃない」。レッドウッド:「どういう意味?」。「ただ、そういうことだ」。「ここにいるのが 好きなんだね?」。「好きとか嫌いとか じゃない。わしはお前が好きだ。だが、年取るとかたくなになって、変化を好まなくなる」。それに対し、決断、意志、自覚を促すレッドウッド。「僕が 考えてること 知りたい?」。「ああ、知りたいな」。「あなたは怖いんだ」。「そうかもしれん」。そして、アールは、思い切って処方薬を飲むのはやめようと決心する。アール:「やって欲しいことがある」。「何でも」。「捨ててくれ」。そう言って、薬瓶を渡されるレッドウッド(2枚目の写真)。
  
  

アールに秘訣を伝授されたレッドウッドが、18番のフェアウェイでいよいよニクラスと対戦する。それまでの成績は、「レッドウッド 8アンダー、ジャック 9アンダー」。場所は、いつかの野原。今度は、最初から好きな番組「バーディ」の2人の解説者が同行している。ジャックのアプローチは、手堅くグリーン上。レッドウッドは、5番アイアンを使い、バーディ狙いに出る。これでもしホールに入れば、レッドウッドが優勝する。あちこち跳ね返った球は、奇跡的に掘った穴に入る。狂喜するレッドウッド。幻想の中で、グリーン・ジャケットを着てインタビューを受ける(1枚目の写真)。これで、夢が叶い、3人揃って暮らせるのだ。喜び勇んで帰宅したレッドウッドに、父からの手紙が届いている。そこには、「レッドウッド、お前を思い切り抱いてやりたい」から始まり、「俺の行動で、お前を傷つけたかもしれない」と反省し、「どうか、自分で自分を守って欲しい」「お前は、わが道を行け。お前には才能がある。それを自覚しながら 成長していくんだ」と鼓舞と訣別の言葉が並んでいた(2枚目の写真)。グリーン・ジャケットの夢が崩れ去る。手紙を破り捨て、勝利のアイアンを折るレッドウッド(3枚目の写真)。
  
  
  

思い切り泣き、一晩中考えたレッドウッド(1枚目の写真)。朝一番で鏡の前に立ち、長い髪をハサミで切り落とす(2枚目の写真)。そして、朝食の席に短い髪で入ってくる。あっけにとられ、「大丈夫なの?」と訊く母。「うん、元気だよ」。そして、アーノルドに向かって、「僕、父さんに会いに行きたい」と言う。アーノルドは、少し考え、「いいだろう。みんなで行こう」。嬉しそうに笑うレッドウッド(3枚目の写真)。家族の一員として受け入れられたレッドウッド。
  
  
  

家の前に4人が乗り込んだトラックが停まっている。玄関のドアが開き、レッドウッドがアールを連れて出て来る(1枚目の写真)。それを見て驚くアーノルド。運転席の前まで来たアールを見た4人の顔が面白い(2枚目の写真)。それにしても、よく4人も一列に座れるものだ。アールは、アーノルドに向かって人差し指を出し、「引っ張れ」と言う。前にも出てきた和解の合図だ。笑い出す2人。アールがアーノルドを抱いてキスし、親子の仲は元通りになった。そして、仲良く荷台に乗り込むレッドウッドとアール(3枚目の写真)。最後に、レッドウッドの独白が入る。「道中、新しい友達ができた。そして、僕は悟った。人生でドロー〔左曲がり球〕が求められた時に、フェード〔右曲がり球〕を打つこともある。その時は、一歩退って、試合を再構成し、ドローを打つことも学ばないと」。レッドウッドは、幻想という希望に頼ること〔フェード〕をやめ、新しい境遇の積極的な改善〔ドロー〕に乗り出すことを決意したのだ。
  
  

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